【本音レビュー】もっとユーモアがほしかった! 話題作『未来のミライ』は現実感たっぷりの家族映画でした


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回、ピックアップするのは、細田守監督の最新作、アニメ映画『未来のミライ』(2018年7月20日公開)です。『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』などで人気の細田監督作品。では物語から。

【物語】

都会に住むある一家。4歳のくんちゃん(声:上白石萌歌)のもとに生まれたばかりの妹がやってきました。でも、くんちゃんはおもしろくありません。お父さん(声:星野源)もお母さん(声:麻生久美子)も、妹の世話にかかりっきりなので、甘えん坊のくんちゃんはどんどん駄々っ子になっていきます。

そんなある日、くんちゃんのもとにセーラー服の女の子が現れました。彼女の名前はミライちゃん(声:黒木華)。くんちゃんの妹の未来の姿でした。そして、ミライちゃんはくんちゃんを、時を超えた冒険へと連れ出すのです。

【リアリティはあるけどユーモアがない】

この映画で描かれる家族は、とても正直で、綺麗ごとが一切ありません。くんちゃんは、両親に相手にされずに孤独のあまり暴れますし、お母さんは育児疲れで愚痴っぽいし、お父さんは妻と子供の板挟みにあって困り果てています。かわいい赤ちゃんが家に来たのに、幸福感がないのです。

細田監督はインタビューで「4歳の男の子の目から見た家族の物語を描きたかった」また「家族だから何も言わなくてもわかりあえるなんてありえない。家族だからわからないことがある」と語っています。監督にもお子さんがいるので、実体験に基づいているのでしょう。この映画は、そんな不器用な家族が、ぶつかりあう姿を描いています。まさに、現代の家族あるあるなのです。

しかし私は、この家族のいざこざを見ているうちに気持ちが沈んでしまいました。なぜならこの家族像は、あまりにもリアルすぎて、ユーモアが足りないからです。
二人の幼い子供のいる家庭で、育児・家事・仕事をまわしていくのは、夫婦が協力しても大変なのはたしかです。でも、厳しいのは現実だけで十分。

映画なのですから、お父さんの家事育児のおかしな失敗や完璧主義のお母さんのちょっと抜けた一面など、キャラを魅力的に見せるような演出が見たかったなと。そういうユーモラスな描写がまったくないので、映画を見ていても、あんまり楽しい気持ちになれないのです。

【ミライちゃんは救世主になれたのか?】

でも、そんな風にリアルにぶつかりあう家族を救うのがミライちゃん。彼女はくんちゃんと一緒に時を超え、家族の過去へと向かいます。そこにはお父さんやお母さんの若い頃の姿があり、くんちゃんは「誰にでも過去があり、人は成長すること」を知り、お兄ちゃんになっていくのです。

ミライちゃんの登場シーンはとっても鮮やかです。これから物語が動き出す感が満載でワクワクします。でも意外とミライちゃんは存在感が薄かった。くんちゃんの駄々っ子ぶりが強烈なので、くんちゃんに食われちゃったように感じました。彼女にはもっと活躍してほしかったです。

【リアルな体験が裏目に出たのかも?】

本作は、細田監督自身が子育てを経験したからこそ、そのリアルにこだわり過ぎて、フィクションの楽しさやユーモアが入る隙間がなくなったのではないかと思いました。知り過ぎていたこからこそ現実に縛られたのかもしれません。

でも映像はとても綺麗です。後半に登場するレトロな駅のシーンなどは、切り取って飾っておきたいほど幻想的!、大きなスクリーンで見るに値するヴィジュアルで、細田監督作の映像の美しさは大いに堪能いたしました。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

『未来のミライ』
(2018年7月20日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:細田守
声の出演:上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治ほか
(C)2018 スタジオ地図

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主役のコナンを食うほどの人気「安室透」の魅力とは!? 7週連続1位の大ヒット映画『名探偵コナン ゼロの執行人』にハマる理由を探ってみた


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回は大ヒット中のアニメ映画『名探偵コナン ゼロの執行人』をピックアップ。本作は劇場版のコナンシリーズ22作目だそうですが、私は初めて鑑賞しました。公開してから6週連続1位! オトナもハマる『名探偵コナン』の魅力とは? ネットで話題の100億の男とは? というわけで見てきました。

【物語】

東京サミット開催地「エッジ・オブ・オーシャン」で爆破事件が発生。現場に残った指紋から、かつて警視庁にいた毛利小五郎が捕えられます。父の逮捕に娘の蘭は大ショック。江戸川コナンは、その爆破現場の映像にチラッと映った人物を見逃しませんでした。その名は安室透……。

コナンは、小五郎の罪をはらすために動き出します。しかし、そのとき東京で同時多発的にテロが発生するのです。

【初心者への配慮?名探偵コナンのプロフィール紹介】

すでに22作目という本作。初めて見る私でもわかるのかなと思ったら、冒頭で「名探偵コナン」誕生の由来を説明してくれます。高校生だった工藤新一が毒を盛られて子供の姿になり、江戸川コナンと名乗って犯人の「黒の組織」を追っている……という、ファンにはおなじみのエピソードもしっかり紹介。初見のオトナにも優しい配慮ですね。

【ストーリーは複雑……人物相関図くださ~い!】

しかし、コナンくんのプロフィールがわかっても、ストーリー&人間関係は意外と複雑でした。爆破事件やテロには、警察庁、警視庁、検察庁という3つの組織が深く関わり、容疑者となった小五郎の関係者もからんでいきます。

加えて本作の鍵を握る「安室透」は私立探偵であり、警視庁の秘密組織に属する「降谷零」であり、探り屋の「バーボン」でありと3つの顔を持つ男なんですよ~。

警視庁などの説明は映画でされるものの、その他の人間関係は、シリーズを通して見ている人しかわからないかも。この映画は、多少予習してから見た方がいいかもしれません。

【本格推理とアクションのミックスに大興奮】

複雑な設定には頭が混乱しましたが、本作の良さは、大スクリーンで見ることを意識して作られていることです。真犯人とその動機を事件の核にしつつ、そこから展開される物語がどんどんスケールアップしていくのです。

サミット会場の爆破 → 同時多発テロ→サイバーテロ→無人探査機「はくちょう」が都内落下の危機!と、息を忘れるほど次から次へと事件が起こり、コナンくんはそのたびに謎解きを展開しつつ、アクションにも参加。頭も体もフル稼働です。

そして謎めいた男・安室が、最終的にコナンとバディのように大活躍。ガンガンぶっ飛ばすカーアクションは安室、最大の見せ場。映画『ワイルド・スピード』を髣髴させるカーテクニックで大興奮させてくれます。

【イケメン男性キャラが女性ファンをガシッと掴んでいる】

実は本作の大ヒットの要因のひとつは、3つの顔を持つ安室なんですね。彼は女性ファンが多く、レビューでも「安室ファンにオススメ」「安室さんがかっこいい!」という声がけっこうありました。

後半、安室が命懸けのアクションをしようとするときに、コナンくんは安室にこんなことを聞きます。「安室さんって彼女いるの?」この質問は「安室ファンが知りたいのはコレでしょ」という製作陣から安室ファンに向けたサービスではないかと。また、それに対する安室の答えが……。コナン初心者の私には「ん?」って感じだったのですが、ファンは「そうよねえ」「よかったあ」とホッと胸をなでおろすでしょう。

【新作は2019年GW公開!】

映画『名探偵コナン ゼロの執行人』は、動員580万人、興収75億円を突破しました(2018年5月29日時点 / 興行通信社調べ)。この大人気シリーズを終わらせるわけはなく、映画のエンドロールで「新作は2019年GW公開」と発表。その映像に登場したのは、コナンくんではなく怪盗キッド。これまた女性ファンが多いキャラだそうです。

劇場には大人女性が多く、意外にも『名探偵コナン』シリーズを支えるのは、女性ファンだったのかもしれないなあと思いました。

執筆=斎藤香 (c)Pouch

名探偵コナン ゼロの執行人
原作;青山剛昌
監督:立川譲
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹、上戸彩、橘境子、博多大吉、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみほか
(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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大人がひとりで見ても満足する『映画クレヨンしんちゃん 爆盛! カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』は深いメッセージのある映画でした【最新シネマ批評】


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』(2018年4月13日公開)です。

『映画 クレヨンしんちゃん』は、1993年『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』から始まり、本作で26作目となる超大人気シリーズ。実は子供だけでなく大人にも人気があり、映画業界でもファンはめっちゃ多いんですよ。

それなのに、今まで1作も見ていなかった私……。そこで今回の最新作で、クレヨンしんちゃんを初体験することにしました。これがとっても楽しかったのです!

【物語】

しんのすけ(矢島晶子)と仲間たちは、カスカベ防衛隊として、伝説のカンフー “ぷにぷに拳” の修行に励んでいました。師匠(関根勤)とラン(潘めぐみ)の丁寧な教えにより、修行は順調。しんのすけは、たぐいまれな才能を“ぷにぷに拳”で発揮していました。

そんなとき、春日部にある中華街「アイヤータウン」では、”ブラックパンダラーメン“ が大流行。しかし、そのラーメンは中毒性があり、食べた人はみな凶暴化し「アイヤータウン」で大暴れするように。

そこで、カスカベ防衛隊は ”ぷにぷに拳“ で応戦するのですが……。

【平和の使者・しんちゃん】

『クレヨンしんちゃん』の映画のことを、私はずっと「子供向けでしょ」と思っていたのですが、この映画は子供のためだけに作られたアニメではありませんでした。しんちゃんの映画から繰り出されるギャグは、大人も大いに楽しめるザッツ・エンタテインメントなのです。

また、この作品は、大人と子供を超えた全人類に向けられたアニメでもあります。なぜならしんちゃんは、平和の使者だからです。

カスカベ防衛隊のみんなが修行する“ぷにぷに拳”は、相手から闘う気力を奪ってしまう拳法。相手がどんなにカッカしていても、フニャ~と戦闘能力ゼロにさせてしまいます。

そしてしんちゃんは、この拳法の修得が早いんです。それは、しんちゃんの脳内が “ぷにぷに” で柔軟性に長けているから。どんな状況でも楽しめるし、チャレンジ精神があるし、スポンジのような吸収力もあるし、何より人を憎んだりしない男の子だからです。

飛びかかってくる相手に対して暴力で打ちのめすのではなく、「ぷにぷに~っ」と叫び、戦闘能力をなくしてしまう、しんちゃん。この平和的な闘い方すごいわ~。世界中で “ぷにぷに拳”を流行らせてほしいと思いましたよ。そうすれば争いごともなくなるのに。

【キャラクターの個性と二転三転する展開の素晴らしさ!】

映画に登場する、しんちゃん以外のキャラクターもいいですね。両親のみさえとひろし、友達の風間くん、ネネちゃん、ボーちゃん、マサオくん。

特に、マサオくんがいちばん最初に “ぷにぷに拳” の修行を始めたのになかなか修得できず、しんちゃんたちに先を越され激しく凹むシーンなど、「マサオ~! 頑張れ~」とポンポンと肩を叩きたくなりましたよ。

加えて、拳法を教える師匠ランちゃんのキャラも良いのです。師匠は、敵のボスにツボを攻撃されて、口を開けば「パンツ~丸見え」しか言えなくなってしまうんです。

この師匠の声を担当したのは関根勤さんで、超ハマリ役! 大いに爆笑させてもらいました。

また、ランちゃんの後半の変貌ぶりも驚きでした。本人にとっては正義なのですが、正義を貫くためなら何をしてもいいのか、暴力でもいいのかという展開になっていき、けっこうハラハラしました。この映画、何気ない裏メッセージが意外と深いんですよ。

もしも『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』を、甥っ子、姪っ子、自分の子に「連れてって」とねだられたら、ぜひ連れて行って一緒に見てください。「まわりに子供がいない」という人は、彼氏とデートで見てもOK。気持ちが凹んでいるときに、ひとりで見るのもOKですよ。きっと元気でますから!

執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』
(2018年4月13日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:高橋渉
原作:臼井儀人
声の出演:矢島晶子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利、林玉緒、一龍斎貞友、佐藤智恵、潘めぐみ、みやぞん、あらぽん、関根勤、水島裕、置鮎龍太郎、真殿光昭、勝杏里、廣田行生
(c) 臼井儀人 / 双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2018

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【本音レビュー】ムロツヨシが声優デビューした話題作『ボス・ベイビー』の演技が素晴らしい! 生意気な赤ちゃんを生き生きと演じていました


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、大絶賛公開中のドリームワークス・アニメーション映画『ボス・ベイビー』(2018年3月21日より公開中)です。ムロツヨシさんが初めて声の吹替えをするということでも話題なのですが、何より“赤ちゃんだけどおっさん”という、特異なキャラの引きが強い。お子様向けのアニメ作品のはずが、大人も巻き込んでいるようです。

そこで今回は、『ボス・ベイビー』を本音レビューしていきたいと思います。(以下、ネタバレ含みます)

【物語】

7歳の少年ティムは、パパとママの愛を一身に受ける妄想好きなひとりっ子。とても幸せな毎日でしたが、弟が生まれてから事態は急変。なぜか黒いスーツ姿の弟は、パパとママを独占してワガママ放題! ティムは寂しくて仕方ありません。

しかしある日、ティムは弟が誰かと電話でペラペラ話している声を聞きました。「赤ちゃんがしゃべっている! なんで?」。

すると弟は、ティムに向かって大人の男の声で話し始めました。「自分はボス。秘密の任務を抱えて派遣された赤ちゃんなのだ」と。

【ムロ節炸裂のボス・ベイビー】

映画『ボス・ベイビー』は、日本語吹替え版でムロツヨシさんが声の吹替えデビュー&映画初主演!というムロツヨシ記念作品となっています。このキャスティングはハマりましたね!

この映画におけるムロツヨシさんは、人気映画『テッド』の日本語吹替え版でテッドを演じた有吉弘行さん的な存在なのではないでしょうか。「ムロさんだから何かやってくれる」「ムロさんだから面白そう」と思わせることが狙い。喜劇俳優としてトップクラスのムロさんは、その期待に十分に応えてくれています。


ボス・ベイビーはテッドほどのエロさや毒気はありませんが、金で何でも解決できると思っているし、常に命令口調で人使いも荒いし、ムカつく上司みたいな嫌味なところがあります。

ムロさんは、そんなボス・ベイビーをムカつくけど面白いおっさん化させています。この赤ちゃん顔でムロさんの声ですから、そのミスマッチ感がもうおかしいです。

【誰でも見られる安心感はあるけど、すこ~し物足りなさも】

ボス・ベイビーには「出生率の低下は人間の愛情がペットの犬に向けられたため。だから赤ちゃん人気を取り戻す」という目的があります。

犬人気の背景には、秘密のミルクで犬の成長を止めて、ずっとかわいい子犬のままにするという黒幕の企みがあり、それをボス・ベイビーとティムは協力して阻止しようとするのです。

実はボス・ベイビーも秘密のミルクがあるからこそ、ビジネスマンでいられるのですが、ミルクが切れるとバブーと赤ちゃん化してしまうっていうのが私的にはツボでした。薬が切れると……というところはちょっとヤバイ感じがしなくもないですが……。

ただ難を言えば、なんとなく先が読めるんですよね。ボス・ベイビーに家から出て行ってほしいと思っていたティムが、彼がいないと寂しくなり、ビジネスとして割り切っていたボス・ベイビーも同じ気持ちで……。そうなると、その後の展開もなんとなくわかり「どうなっちゃうんだろう」というハラハラ感がちょっと薄いかも。冷徹なおっさん赤ちゃんが愛情に芽生える場面は感動的ではあるんですけどね。

【ムロさん以外の日本語吹替え版メンバーも大成功!】

とはいえ、この映画は、ムロさん以外の日本語吹替え版メンバーも最高なんですよ! 悪役を演じる山寺宏一さんや、大人になったティム&エルヴィス・プレスリーを演じ分ける宮野真守さんの素晴らしさは、もうご存知だと思いますが、ムロさんと同じく声の吹替え初挑戦の芳根京子さんは、ティム少年を好演、あまりに上手くて驚きました。

またティムのパパをNON STYLEの石田明さん、ママを乙葉さんが演じていますが、お二人の吹替えも「この声、誰?」とまったくわかりませんでした。みなさん神演技! 日本語吹替え版で失敗すると作品の質も下げてしまいますが、本作はムロさんを筆頭に、日本語吹替え版のキャストの力が映画のクォリティを上げていると言ってもいいと思います!

3月21日の公開日、都内では完売の劇場もあったようです。楽しくてほっこりしたい映画を見たいときはゼヒ! おっさんみたいな赤ちゃんに会いに行ってください。




執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『ボス・ベイビー』
(2018年3月21日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:トム・マクグラス
声の出演:アレック・ボールドウィン、マイルズ・バクシ、ジミー・キンメル、リサ・クドロー、スティーヴ・ブシェミほか
(日本語吹替え版)ムロツヨシ、芳根京子、宮野真守、乙葉、石田明、山寺宏一ほか
(C)2017 Dreamworks Animation LLC. All Rights Reserved.

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【本音レビュー】ムロツヨシが声優デビューした話題作『ボス・ベイビー』の演技が素晴らしい! 生意気な赤ちゃんを生き生きと演じていました


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、大絶賛公開中のドリームワークス・アニメーション映画『ボス・ベイビー』(2018年3月21日より公開中)です。ムロツヨシさんが初めて声の吹替えをするということでも話題なのですが、何より“赤ちゃんだけどおっさん”という、特異なキャラの引きが強い。お子様向けのアニメ作品のはずが、大人も巻き込んでいるようです。

そこで今回は、『ボス・ベイビー』を本音レビューしていきたいと思います。(以下、ネタバレ含みます)

【物語】

7歳の少年ティムは、パパとママの愛を一身に受ける妄想好きなひとりっ子。とても幸せな毎日でしたが、弟が生まれてから事態は急変。なぜか黒いスーツ姿の弟は、パパとママを独占してワガママ放題! ティムは寂しくて仕方ありません。

しかしある日、ティムは弟が誰かと電話でペラペラ話している声を聞きました。「赤ちゃんがしゃべっている! なんで?」。

すると弟は、ティムに向かって大人の男の声で話し始めました。「自分はボス。秘密の任務を抱えて派遣された赤ちゃんなのだ」と。

【ムロ節炸裂のボス・ベイビー】

映画『ボス・ベイビー』は、日本語吹替え版でムロツヨシさんが声の吹替えデビュー&映画初主演!というムロツヨシ記念作品となっています。このキャスティングはハマりましたね!

この映画におけるムロツヨシさんは、人気映画『テッド』の日本語吹替え版でテッドを演じた有吉弘行さん的な存在なのではないでしょうか。「ムロさんだから何かやってくれる」「ムロさんだから面白そう」と思わせることが狙い。喜劇俳優としてトップクラスのムロさんは、その期待に十分に応えてくれています。


ボス・ベイビーはテッドほどのエロさや毒気はありませんが、金で何でも解決できると思っているし、常に命令口調で人使いも荒いし、ムカつく上司みたいな嫌味なところがあります。

ムロさんは、そんなボス・ベイビーをムカつくけど面白いおっさん化させています。この赤ちゃん顔でムロさんの声ですから、そのミスマッチ感がもうおかしいです。

【誰でも見られる安心感はあるけど、すこ~し物足りなさも】

ボス・ベイビーには「出生率の低下は人間の愛情がペットの犬に向けられたため。だから赤ちゃん人気を取り戻す」という目的があります。

犬人気の背景には、秘密のミルクで犬の成長を止めて、ずっとかわいい子犬のままにするという黒幕の企みがあり、それをボス・ベイビーとティムは協力して阻止しようとするのです。

実はボス・ベイビーも秘密のミルクがあるからこそ、ビジネスマンでいられるのですが、ミルクが切れるとバブーと赤ちゃん化してしまうっていうのが私的にはツボでした。薬が切れると……というところはちょっとヤバイ感じがしなくもないですが……。

ただ難を言えば、なんとなく先が読めるんですよね。ボス・ベイビーに家から出て行ってほしいと思っていたティムが、彼がいないと寂しくなり、ビジネスとして割り切っていたボス・ベイビーも同じ気持ちで……。そうなると、その後の展開もなんとなくわかり「どうなっちゃうんだろう」というハラハラ感がちょっと薄いかも。冷徹なおっさん赤ちゃんが愛情に芽生える場面は感動的ではあるんですけどね。

【ムロさん以外の日本語吹替え版メンバーも大成功!】

とはいえ、この映画は、ムロさん以外の日本語吹替え版メンバーも最高なんですよ! 悪役を演じる山寺宏一さんや、大人になったティム&エルヴィス・プレスリーを演じ分ける宮野真守さんの素晴らしさは、もうご存知だと思いますが、ムロさんと同じく声の吹替え初挑戦の芳根京子さんは、ティム少年を好演、あまりに上手くて驚きました。

またティムのパパをNON STYLEの石田明さん、ママを乙葉さんが演じていますが、お二人の吹替えも「この声、誰?」とまったくわかりませんでした。みなさん神演技! 日本語吹替え版で失敗すると作品の質も下げてしまいますが、本作はムロさんを筆頭に、日本語吹替え版のキャストの力が映画のクォリティを上げていると言ってもいいと思います!

3月21日の公開日、都内では完売の劇場もあったようです。楽しくてほっこりしたい映画を見たいときはゼヒ! おっさんみたいな赤ちゃんに会いに行ってください。




執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『ボス・ベイビー』
(2018年3月21日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:トム・マクグラス
声の出演:アレック・ボールドウィン、マイルズ・バクシ、ジミー・キンメル、リサ・クドロー、スティーヴ・ブシェミほか
(日本語吹替え版)ムロツヨシ、芳根京子、宮野真守、乙葉、石田明、山寺宏一ほか
(C)2017 Dreamworks Animation LLC. All Rights Reserved.

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ドラマ版とアニメ版はここが違う 話題作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を見比べてみました


【最新シネマ本音レビュー】
映画ライター斎藤香が公開映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのはアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』です。岩井俊二監督による同タイトルのテレビドラマをアニメ化した作品で、演出は『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之+『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』の武内宣之両監督(新房氏は総監督)で、アニメ好きなら「おおっ!」と思う2名。

そして映画『モテキ』などの大根仁氏が、今回は脚色として参加し、声の主演は菅田将暉と広瀬すずという豪華な布陣です。しかし、ネットでは賛否両論。

というわけで、ポーチ記者の私、両方見てみました。ドラマ版はだいぶ前に見ていたのですが、忘れている箇所も多いので再見。そして、ドラマ版との違いとそれぞれの魅力についてレビューいたします。
※未見の方、若干のネタバレあるので要注意です

【物語】

ある夏の日。中学1年の典道(声:菅田将暉)らは「花火は横から見ると平べったいのか」と疑問に思い、あーでもないこーでもないと言い合った結果「灯台なら花火を真横から見られるはず」と、夜の花火大会を灯台で見ることにします。

一方、典道と同じクラスのなずな(声・広瀬すず)は、母親の再婚が決まり、転校することに。反発した彼女は、典道の親友の裕介(声:宮野真守)をプールで花火に誘い、そのまま「かけおち」しようとします。しかし、裕介に約束を破られ、母親に連れ戻されてしまうのです。

それを見ているだけで助けられなかった典道は、なずなが落とした不思議な玉を投げます。するとプールの時間に戻り、典道はなずなに花火に誘われるのです。

【ドラマ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」とは?】

本作は、1993年フジテレビのドラマ枠『if もしも』のスペシャル版として放映されたドラマで、監督・脚本は岩井俊二。ドラマ作品だったにもかかわらず、日本映画監督協会新人賞を受賞した作品です。説明セリフが少なく、役者の演技やニュアンスで伝えていく演出と、映像にもこだわりを見せた伝説のドラマで、岩井俊二が映画界に進出するきっかけとなりました。

【アニメとドラマの違い】

アニメ版とドラマの違いでまず気づくのは年齢。ドラマ版は小学6年生の物語ですが、本作では中学1年生という設定です。そして、時間が戻るきっかけを作る不思議な玉は、ドラマ版にはないアイテムです。

またドラマで時間が戻るのは1回ですが、アニメではこの不思議な玉が、二人を数回タイムリープさせます。ドラマでは乗らなかった電車に二人が乗ったり、母親と再婚相手が、なずなを追いかけてきたり、なずなが「ママが歌っていた曲」と松田聖子の「瑠璃色の地球」を歌ったり。アニメの終盤では、幻想的な世界が広がって、もはや後半にドラマ版の世界観は皆無です。

【45分のドラマを90分の劇場映画にする難しさ】

本作の総監督・新房昭之氏は、『魔法少女まどか☆マギカ』などで、アニメファンにはおなじみの人気監督。アニメーション制作はシャフト。私は新房監督の映画もシャフト制作のアニメも、今回初めて鑑賞しました。

アニメ好きの間では、シャフトへの信頼は大きく、アニメファンは満足していたようですが、それ以外の人たちの評価は厳しい……。私は後半の展開がちょっと受け入れがたかったのですが、それは45分のドラマを90分の劇場作品にするにあたり「アニメでしかできないことをしよう!」と大胆な展開に踏み切ったのではないかと予想します。そうしないと、アニメ化した意味がありませんからね。

【ターゲットを間違えたのかも?】

おそらくこの映画は、コアなアニメファンに向けて公開された方が喜ばれたのかもしれません。上映規模は縮小されますが、その方が評価は高かったでしょう。逆にそういう映画だからこそ、アニメファン以外の人が、普通に映画を楽しむ気持ちで臨んで「?」となったのです。アニメファンのツボは押しても、原作ドラマや一般の映画ファンのツボとは外れており、あまりカタルシスを感じられなかったというか……。

【これはやはり小学生の物語】

アニメを見た後、ドラマを見直しましたが、個人的には、設定を中学生に変えたことで、この物語の世界が崩れたように見えました。小6と中1は、たった1年だけど、この1年は大きいです。なずなの「かけおち」という言葉や背伸びした会話も、小学生だから可愛く聞こえるし、家出しようとしたことも、身勝手な親に対する小さな抵抗だったんだなあと納得できるのです。

中1になると、小学生のときに無邪気さは少し薄れますし、男女間の距離も離れます。それゆえに、物語のベースが同じまま、年齢を上げて無理が生じていたような気がしました。特に男子グループは、小学生が言ったりやったりすることを中学生でやっている違和感があり、これは私がドラマ版を見ているからかもしれないけど、それでもやはりこの物語は、小学生だからこそ成立するひと夏のファンタジーではないかと。

とはいえ、アニメファンのツボは確実に抑えているわけですから、そこは人気監督ならでは。アニメ好きな人は期待を裏切らない内容ではないかと思うので、ぜひ見てください。満足度は高いですよ。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』
(2017年9月16日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー)
総監督:新房昭之/監督:武内宣之
アニメーション制作:シャフト
原作:岩井俊二
脚本:大根仁
声の出演:広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴、三木眞一郎、花澤香菜、櫻井孝宏、根谷美智子、飛田展男、宮本充、立木文彦、松たか子ほか
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

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最新映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』でミニオンたちが大暴れ! 映画史上最強のバナナキャラにキュン!【最新シネマ批評】


【最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、大阪のUSJでも大人気のキャラクター、ミニオンが大活躍するイルミネーション・エンターテインメントの最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017年7月21日公開)です。

ユニバーサル・スタジオとイルミネーション・エンターテインメントによる『怪盗グルー』のシリーズは、本作で3作目。2作目と本作の間にスピンオフの『ミニオンズ』がありますが、みなさん、勘違いしないでくださいね。もともと、このシリーズの主役はグルーであり、ミニオンはグルーの周りでワヤワヤやっている黄色い可愛いヤツみたいな存在だったんですよ。それがも~主役級の大人気! では物語からいってみましょう。

【物語】


元天才子役のバルタザール(声:トレイ・パーカー)は、思春期を乗り越えられず、人気は低迷。今はハリウッドに恨みを持った悪党に成り下がっていました。彼は自分が開発したバブルガム弾を武器に、世界最高のダイヤモンドを盗むことに成功!

一方グルー(声:スティーヴ・カレル)はルーシー(クリステン・ウィグ)、三姉妹とともに仲よく暮らしています。もはや悪党の影がなく善人になったグルーは、反悪党同盟としてバルタザールを追いかけていました。

そんなグルーに不満なのがミニオンたち。悪党のボスだからこそ、今までついてきたのに、いい人になったグルーに用はない! と、なんと全員でグルーの家から大脱走してしまうのです。

【グルーの双子の兄弟が登場!】

『怪盗グルーのミニオン大脱走』には新キャラが登場します。なんとグルーの双子の兄弟ドルーです。顔はそっくりですが、ツルツル頭のグルーとは正反対にフサフサの髪、そして貧乏なグルーとは正反対に大金持ち!

しかし、ドルーは小心者で、父親が求めていた悪党らしさは皆無。父の悪の血を継いでいたのはグルーだったのです。お互いにないものを補いあっているグルーとドルーの新コンビにワクワク、ドルーのドンくささに「おいおい」と突っ込みながらハラハラという感じです。

バルタザールは完全なる中二病オヤジ。大人になりきれず、80年代ダンスミュージックでステップを踏む、しょーもないけど面白い悪党で、かつ、なかなか強敵です。また全編に流れる80年代ミュージックは、アラフォー以上の世代には懐かしく、若い世代は逆に新鮮かも。マイケル・ジャクソン、ヴァン・ヘイレン、a-haなど、バルタザールじゃなくてもノリノリに!

【ミニオンたちの大脱走が笑いのポイント】

そしてみんなが大好きなミニオンたちは、脱走したものの、あいかわらず無計画な行動で珍道中になります。歌のオーディションに乱入したり、塀の中のミニオンになったり、海辺に落下してバカンスしたり、あのルックスですから何をやってもかわいい~! Tバックのおしり、フォーメーションダンスなど、しっかり期待に応えてくれますよ。

今回はグルーと別行動になるので、ちょっと見所が分かれた感がありますが、もともとミニオンは、いつも本筋からは逸脱したところでワヤワヤやっているキャラなので「ま、いっか」という感じです。

【イルミネーション絶好調!】

ディズニー、ピクサー、ジブリに続けと、イルミネーション・エンターテインメントは大躍進! 2016年は『ペット』、2017年には『SING/シング』が日本で大ヒット。そして今夏は、イルミネーションで一番人気であろう『怪盗グルーのミニオン大脱走』が登場!

何を言っているのかわからないながらも、ちょいちょい毒を吐いているような感じのワルかわいいミニオン。大人も子供も楽しめる作品なので、デートもあり、女子同士もありです! この夏『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』のジャック・スパロウの最大のライバルは、ミニオンかもしれません。

執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『怪盗グルーのミニオン大脱走』
(2017年7月21日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー)
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ
声の出演:スティーヴ・カレル、クリステン・ウィグ、トレイ・パーカー、ミランダ・コスグローヴほか
日本語吹替え版:笑福亭鶴瓶、芦田愛菜、中島美嘉、松山ケンイチ、いとうあさこ、山寺宏一、宮野真守、生瀬勝久ほか
(C)Universal Studios

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言われなかったら星野源だとわからない! 星野源が映画『夜は短し歩けよ乙女』で、片思いのドツボにはまる先輩を熱演【最新シネマ批評】


【公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(2017年4月7日公開)です。森見登美彦の同名ベストセラー小説のアニメ化で、アニメ界でも独自のヴィジュアルを持った湯浅政明監督作。そして声の主演は星野源! 

脚本は劇団「ヨーロッパ企画」の代表で、第61回岸田國士戯曲賞を受賞した上田誠。音楽はASIAN KUNG-FU GENERATIONという強力なメンツです。では物語からいってみましょう!

【物語】

京都の大学。黒髪の乙女(声:花澤香菜)に恋する先輩(声:星野源)は、何とか彼女とお近づきになろうと“ナカメ作戦”を実行します。それは、ナ=なるべく、カ=彼女の、メ=目に留まるという作戦。彼女の行くところへ先回りして「やあ」と声をかけるのです。

しかし、乙女は先輩の恋には気づかず、偶然だと思い込んでいます。彼女はいろいろな場所へ繰り出し、先輩は乙女を追いかけて、なんとか振り向いてもらおうと悪戦苦闘。そんな先輩と乙女を、二人の周りの個性的な面々がからんできて……。

【抜群のセンスと独特な世界観について行けるか】

アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』で、まずビックリするのはスタッフに人気クリエイターが大集合しているところ。湯浅監督はもちろんですが、キャラクター原案は人気イラストレーターの中村佑介氏、音楽はASIAN KUNG-FU GENERATION、声の主演は星野源ですよ! そして映画を見れば、中村氏のイラストがアニメ化されているわけで、ヴィジュアル的な満足度はかなり高いです。

最近は『君の名は。』ほか、背景を細かく描きこむアニメが多いのですが、本作はリアリティを追求せず、中村氏の世界観をいかに押し出すかという絵作りになっているように思えました。物語展開はスピーディで細かい説明ははぶいて、乙女を追いかける先輩の心の中のドタバタを鮮やかに切り取って見せていくのです(やがてそのドタバタが行動に現れるのですが)。

原作未読でしたが、正直、原作を読んでから見た方がいいかもしれません。わかりにくい複雑な話ではないのですが、一種独特なノリがあり、湯浅監督の世界観がわかっている人ならば、未読でも大丈夫かもしれませんが、湯浅監督の映画も初めて、原作も読んだことはないとなると、若干置いて行かれる感があります。ジブリアニメのようなものを想定していくと、全然違いますから、そこ要注意です。

【大学時代に戻りたくなるかもしれない映画】

『夜は短し歩けよ乙女』は大学生の織りなすファンタジーです。先輩が後輩に恋をしたり、飲み会があったり、学園祭があったり、おかしな仲間がからんできたり、将来への不安は置いといて、今を楽しもうぜ的な世界が展開されます。

この物語の中心にある片思いは恋の悩みのひとつですが、あまり切実感がないのは、先輩はけっこうリアルな人物像だけど、黒髪の乙女が天使みたいな女の子だからかもしれません。いじわる目線で見ると「こんな女の子いたらいいよね」という男の願望がつまった女子大生。男性小説家の描く女性像にそういう理想はありがちですからね。

この映画は、好きな人はめっちゃ好きでしょう! ヴィジュアルにハマり、ふわふわとした恋の世界と個性的なキャラクターたちをギャップを楽しめると思います。ウェス・アンダーソン監督(『グランド・プタペスト・ホテル』)を思い出しました。描いている世界も監督のセンスも違うけれど、見る人を選ぶ、好きな人は大好きという作風です。

ちなみに声優陣ですが、先輩を演じた星野源さんは、言われなかったら星野さんと思わなかったかも。それくらい私はしっくりきていました。花澤香菜さんは美声です、とてもキュートな声がさく裂していました。そしてロバート秋山氏の声によるパンツ総番長は凄い! さすがトップクラスの芸人、「クリエイターズ・ファイル」で鍛えた演技力で何にでもなれる実力者。アニメでも証明されました!

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『夜は短し歩けよ乙女』
(2017年4月7日より、TOHOシネマズ日本橋ほか、全国ロードショー)
監督:湯浅政明
原作:森見登美彦
キャラクター原案:中村佑介
声の出演:星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次ほか
(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

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